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「なんでも相談所」を開設

上垣カ
(津名町)

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阪神・淡路大震災による死亡者はじめ多くの被災者が生活の基盤となる住居に支障が生じて、被災者はいまだかって経験したことがない物心両面にわたる甚大な被害を受けています。
このようななか、兵庫行政監察事務所から事務所職員3名を派遣して3日間の相談所を開設する計画があることを知らされました。私は、混乱している中での相談所開設に当たっては、被災者の目線でのペースで、かつ住民が身近かに感じる相談所の名称を付けなければと考えまして、「なんでも相談所」として開設することとしました。
広報活動としましては、淡路島1市10町の行政相談委員連絡担当職員に連絡をして各避難所に相談所開設要領を提示し、更に、商工会、農協、漁協へ告知しましたが、新聞などは枚数も少なく限度があり、被災者にも相当混乱があると思考しましたので、電波を利用することを思いつきました。しかし、淡路島はNHK神戸支局管内であり、同放送局が被災していること、神戸から淡路への海上交通も障害になっておりました。幸いにして大鳴門橋が通行可能でありましたので、NHK徳島支局にお願いをいたしました。
いざテレビ放映となりますと、20名程度のスタッフと大型車両などの準備もあり、第1日目には間に合わなくて、2日目に取材にこられ、お昼のニュースとして全国放送され、住民への周知効果が大いにありました。また、この放送を見て、かって兵庫行政監察事務所におられたときに相談業務の指導をして戴いて、今は、大阪、東京へ転勤された方々から「なんでも相談所」の開設をみたと電話での激励を戴き、たいへんなつかしく、このような方から評価されたことで、一層頑張ろうと思いました。

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津名町において、兵庫行政監察事務所の応援を得て、2月13、14、15の3日間開催した。

このときから毎月「なんでも相談所」を開設していますが、相談などから被災者の状況をみてみます。
被災した者で年をとった人の中に、疎遠勝ちになっていた子供の家族から震災を機会に一緒に住もうという申し出があって、隣人たちから幸せ一杯だとうらやましがられて離島した人も多かったのですが、結局、相手方の家庭での心労も多く、長い人でも1か月程度で故郷に帰ってきて、仮設住宅に入居をしています。これまでの利便、効率、生長など大都会指向の時代は過ぎて、住み慣れた町に戻りたいという願望が強く、また被災者は元の住居地かできればあまり離れないところに住みたいという人が増えています。

 

 

 

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